人の絆をリアルに描いた作品。
フランス映画と言えば、芸術的でお洒落だったり小難しかったりと、どこかお高くとまっていて文学者の嗜みのような垣根があった。しかし、この作品はフランス映画の良さを素直に感じることができる。世界を感動と笑いの渦に巻き込んだというだけあって、心から泣いて笑える作品に仕上がっている。個人的にハンディカムでの描写が気に入っており、映像に親しみが持てたのが良かった。
主人公のドリスはスラム育ちの黒人の男性。彼は職安で紹介された、富豪フィリップの介護の面接を受ける。しかし、職が得られるとは初めから思っていない。彼は失業手当をもらうため、就職活動の証明書にサインをしてさっさと不合格にしてくれと言う。
面接で受かる気のないドリスは、フィリップ達を相手にジョークを交えながら会話を進める。フィリップは、自分の事を障害者として扱わない態度を気に入り、ドリスを仮採用する。そこから物語は緩やかに優しく進み始める。
物語を通して、ドリスとフィリップが黒人や障害者というステレオタイプではないことが分かってくるのも印象的。ドリスは人並みの扱いを受けてこなかった分、人を見下すことや人間扱いしないことを嫌う良心の人だし、フィリップは元々はエネルギッシュな人だが障害者になったことで自信を喪失している事が分かる。(排泄物の介助を受ける立場になるのは辛い事だろう)
ドリスとフィリップが上手く噛み合うさまは、まさに最強の二人といったところだろう。
ドリスが屋敷で出会う人々との交流も印象的だ。ベテラン介護士のイヴォンヌはお堅いおばさんだが、物語が進むにつれて表情が豊かになっていく。フィリップの娘(養子)は母親が他界し、父親が全身麻痺とうい状態でまともな愛情が受けられずグレ始めているが、ドリスが来たことで徐々に問題が解決していく。娘のボーイフレンドはチャラ男だが、彼もまたドリスによって誠実な人間に変わっていく。
またドリス自身もフィリップの介護を経て、社会的に立ち直っていく。ドリスと母親について言葉は多く語られないが、彼らの親子の絆も描写から十分伝わってくるので、こちらも期待して見てほしい。
少々のネタバレを含むが、書かないと気付かずに見終わる人が居そうなので書いておきたいことがある。ラストシーンで出会うドリスはもう介護人ではない。フィリップとは主従関係ではなく対等なのだ。彼らのやり取りが、それまでのやり取りと異なる意味を持つことを気付くと、物語の奥深さを感じ入ることができる。
社会に揉まれるうちに失っていく感情を、ストレートに思い出させてくれる素晴らしい作品。
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