友人に勧められて見た作品。注目の超若手プロデューサーの作品という事もあり視聴に至った。
タイトルから恋愛モノやホラーといったものを想像していたが、予想を遥かに超えた作品だった。暗鬱な内容なのだが、構成・テーマがはっきりとしておりラストは清々しくさえある。映画の醍醐味である演出も練られており、良い意味で衝撃的な作品だった。監督が「見た人に様々な感情を呼び起こさせる、向き合わせる作品」と評していたが、まさにその通りだと思う。
内容についてだが、作品の冒頭は騒がしい中学校の教室から始まる。女教師が淡々と生徒に語りかけているが、誰も聞いていない。ただ、女教師が何か異常であることが分かってくる。そして彼女は淡々と「私の娘をこのクラスの生徒が殺した」という「告白」を始める。これだけでもショッキングな内容なのだが、これが何と冒頭30分で語り終わってしまう。そして、彼女が学校を去ると同時に、ようやく「告白」とタイトルが表示される。それから表示される「3か月後」というテロップ。そこから、テーマを更に掘り下げていくストーリーはまさに圧巻。人間が「見たくない」と無意識に蓋をしてしまうような所まで、まさに「向き合わせる」ような感じを受けた。
誰が悪いのか。悪意があるのか。何が正しいのか。犯罪者は加害者なのか被害者なのか。次第にそれが分からなくなってくる。ともすると、人は同情・共感できる側に肩を持ちがちだ。しかしながら作品は次から次へと共感できる相手を変えてくる。しかも被害者から加害者に変貌していく様を。それは悪意のバトンリレーのようですらある。凶行を起こす人間は誰もが普通の人間だ。そこには善も悪もなく、ただただささやかな幸福を欲しているだけである。
映画を見ていると段々と犯罪者側の感情に浸ってくる。凶行を起こすことが唯一の解決策に思えてくる。達成すればすべてから解放されるカタルシスを味わえる。クライマックスでそんな気持ちになりかけていたとき…、女教師のとった行動と発言が胸に深く刺さる。
この作品には「良い人間」は一人もいない。誰もが悪い方向に働く片棒を担っている。映画を見ると、もしかしたら現実の出来事ですら「誰が悪かったのだろう」「何が悪かったのだろう」と考えているかもしれない。しかし、この映画はそういったものをテーマにしていないので答えはない。
この映画が語りかけているものは「自分が悪であると自覚すること」ではないだろうか。この作品は主要な人物はさることながら、名のないクラスメイト達の行動でさえ頭から焼き付いて離れない。特にコミニカルに描かれた「寄せ書き」のシーンは後々ブローのように効いてくる。
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